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こどもたちに読ませたい本シリーズ③ ”「偶然」の統計学”

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今も昔も想像力を武器に活躍する人たちがいる。

自らの頭の中からまったく新しい世界を作り出す

稀有な才能の持ち主達。

 

楽家、小説家、画家などはその代表例だろうし

他にも映画やTVなどの脚本家や監督、イタリアではサッカーにおける

最高峰の選手を評してファンタジスタ(Fantasia想像性-ista人)とも呼ぶ事も。

他にも想像力を駆使する職業の例を挙げていけばキリがない。

 

人生における歓びの多くは想像力がもたらした産物といえるだろう。

 

ただし、その想像性が仇となり現実世界との折り合いに悪影響を及ぼし

感情面、経済面、人間関係などの実生活が破綻した天才芸術家の

ドラマチックな成功と挫折の例には枚挙にいとまがない。

 

それは想像力とは真逆の能力、

「物事をありのままに見る事」に長けていない事が原因だろう。

 

自分は幼少の頃から今の今まで想像力だけで生き延びてこられた

人間だと思っている。

 

頭の中で自分が考える理想の自分と実世界での自分との

強大なギャップを想像力で補いながら生きているのだ。

 

現実世界における成功者と呼ばれるような方々は一様に

その真逆の「リアリスト」「現実主義者」が多いように見受けられる。

 

彼らは頭の中の世界にではなく、実際の世界にひとつひとつ石を積んでいく

人たちだ。その行為はある日、巨大な建造物を彼らの前に出現させる。

 

 

今回、ご紹介する”「偶然」の統計学”という本。

東京六本木のTSUTAYA  TOKYO ROPPONGIで

コーヒー片手に妄想に耽っていた時に文字通り「偶然」手に入れた。

 

「偶然」の統計学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)

「偶然」の統計学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)

 

 

そして、その本を購入した2017年10月31日購入のレシートが

記念日として今も本にはさんである。

 

なぜならその日以来、自分が空想の世界に入り浸りすぎていると感じた時

この本の存在が、自分を現実世界に引き戻してくれるからだ。

 

もし自分にこどもがいて、その子にこの本を読めるような読解力がつき

内容をほぼ理解する事が出来るのなら親として教える事は特にないと思う

くらいインパクトがある内容だった。

 

ただし、もしかしたらその子は子供らしさや無邪気さのようなものを

少しだけ失ってしまうかもしれないとも思う。

 

それでも、現実世界を生きる為にこどもたちにはどうしても知っておいて欲しい知恵が

この本には書かれている。

 

物事をありのままに見る為に必要な、たった5つのシンプルな法則。

 

①不可避の法則 

起こりうるすべての結果のうち、そのうちのどれかは必ず起こる

 

②超大数の法則 

機会の数が十分にたくさんあれば、どれほどとっぴな物事も起こっておかしくない

 

③選択の法則

物事が起こったあとに選べば、確率は好きなだけ高くできる

 

④確率てこの法則

状況のわずかな違いが、確率に途方もなく大きな影響をもたらしうる

 

⑤近いは同じの法則

十分に似ている事柄は同じものと見なされる

 

どれもシンプルな法則だが、頭の良い大人であっても、

この法則をすべて理解している人はきわめて少ないのではないだろうか?

 

5つの法則の詳しい解説は書籍を読んでいただくとして、今回はひとつだけ

自分がお気に入りの「近いは同じの法則」を実例で解説したい。

 

「近いは同じの法則」にどれほど人生を無駄にされられてきただろうか

と思えるほど、読んでいる最中に笑いが止まらなかった。

 

以下は本に紹介されている

ソール博士の超心理学実験の例

 

1934年から1939年まで行われた彼の実験では、

160人がゼナーカード↓を使って合わせて128350回の予想を行った。

結果は無に等しかった。

偶然予期されるところからの有意な偏差は見られなかったのである。f:id:mrnancy:20191104230322p:plain

〈中略〉

ソールがうんざりして諦めようとしていたとき、同僚の研究者の

ウィートリー・カーリントンが、得られた結果で「ずれた」予想

ー目標カードにではなくその1枚前ないしはあとにめくられたカードに対

する的中ーを調べてみるよう提案した〈中略〉

ソールがしぶしぶ自分の実験記録に残されていた大量のデータを分析する

という単純な作業にとりかかったところ、報われたと同時に面食らったこ

とに、被験者の1人のベイジル・シャックルトンが常に1枚あとのカードを

ーつまり予知能力があるかのようにー当てており、

その成績は偶然の可能性を排除せざるをえないほど高かった

 

被験者は160人、実験回数は10万回を優に超える予知能力実験。

何の成果も得られなかったという結果を尊重せず

ある研究者の「アイデア」で別の調べ方をしてみると

被験者160人中たった1人だけが1枚あとのカードを偶然にしては

多い回数を当てていた・・・

 

上記の例をふまえ、本書にははっきりとこう記してある。

 

この例は私のお気に入りだ。

結果が予想と一致しない場合に

人がいかに「説明」をひねり出すか

をよく表しているからである

 

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自分は子供時代から本当につい数年前まで

「ガラにもないような、善い行ないをすると天候が大荒れする」

という変わったジンクス?のようなものを信じこんでいた。

 

これは家族も同様の認識をしていて、例えば

 

自分が率先して部屋の大掃除をしたり・・・

特になんの前触れもなくおみやげを買ってきたり・・・

ご近所さんや親戚の住宅設備の不便を解消してあげたり・・・

クルマを運転中に積極的に譲り合い精神を発揮したり・・etc

 

すると後日、記録的な積雪、巨大な雹がいきなり降る、

急な夕立、晴れ予報が雨などになり

 

「おまえ、なんか善い事しただろう笑」

「また雨でも降るぞ笑」

「(自分で)あした雪降るから笑」

などと言ったり、言われているうちに

自分がそういう「特殊能力」を持っているかのように思い込んでしまうようになってしまった。

 

良い事をすると、褒められるどころか揶揄される環境に慣れきってしまい

後日、いかにこの考え方が自分の精神面に破壊的な影響をもたらすのかを知り

「今後は言わないし、言うなよ」と釘を刺すまで数十年も何の根拠もない迷信を

信じ込んでいるありさまだった。

 

善い行いをした時に天候が崩れなければ無視をするか、勝手な理由をつける。

崩れたら崩れたでそれこそ根拠のない証拠がさらに強化されてしまう。

 

これは独断だが、恐らく人間という生物は自分の予想と一致しない

不都合な真実」には「とにかくなんらかの理由」をつけて「解決」してしまわないと

「不安」という漠然とした「恐怖」に囚われ、前へ進めない性質を持っているのではな

いだろうか?

(上記の独断も勝手な理由による思い込みなのかもしれないが・・・)

 

人間には物事がいきなり「何の理由もなくただ起こる」という事への

抵抗感、究極的には自分の死が「何の理由もなくただ起こる」事への

恐怖感から「偶然性」というものに対して鈍感にならざるを得ないのかもしれない。

 

個人的な考えだが、出来る事なら早い段階から数字や統計に親しんでおいた方が

人生を長いスパンで考えた時に良い選択が出来る「確率」が高まると思う。

 

”「偶然」の統計学”はそういう考え方を最近になって教えてくれた

稀有な一冊で、ぜひ皆さんに読んでもらいたい。

 

個人的には幼少時から数字と確率・統計に親しみ世界的な投資家となった

ウォーレン・バフェットのような思考法をする人物がこどもたちのロールモデルになっ

て欲しいと願う。

 

リスクは、自分が何をしているか

理解していない事から生まれる

ウォーレン・バフェット

バフェット・バイブル: 本物だけを見抜き富を築く最強投資家の言葉

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